※ 本記事は情報提供を目的とした個人的な分析であり、特定の投資商品の売買を推奨するものではありません。投資・税務・法務の判断は、公的資料の確認と専門家への相談の上、ご自身の責任で行ってください。記事の執筆時点以降、市場状況が変更される場合があります。
「都心3区ならどこも似たようなものでしょう?」— そう聞かれるたびに、私は首を横に振ります。千代田・中央・港は、同じカテゴリーではありません。 「都心」という共通ラベルの下に、まったく異なる性格、異なる需要構造、異なる投資ロジックが存在しています。区ごとのデータで確認していきましょう。
東京23区ブランドガイドシリーズ Ep.1 です。Ep.0 プロローグでご紹介した12本シリーズの最初の深掘り編として、今回は都心3区 — 千代田区、中央区、港区 — を取り上げます。
3区はそれぞれ完全に異なる性格と需要基盤を持っています。区ごとにデータを直接比較しながら見ていきます。
データ基準時点:2025〜2026年上半期。不動産相場は四半期ごとに変動しますので、出典リンクで最新データをご確認ください。
目次
1. 千代田区
ブランドポジショニング
千代田区は東京で最も「権威ある」区です。皇居、国会議事堂、総理大臣官邸、最高裁判所がすべてこの区内にあります。丸の内・大手町は日本の大企業本社とメガバンクが集積する金融・業務の中枢です。その北東部、秋葉原は世界的な電子・サブカルチャーの拠点として知られています。
居住地として、千代田区は独特の立ち位置にあります。23区の中で人口が最も少ない区(約6万7千人)でありながら、昼間の流入人口は80万人を超えます。居住空間そのものが希少なだけに、マンション価格は東京最高水準を維持しています。
マンション平均売買相場
| エリア | ㎡単価(2025〜2026) | 坪単価換算 |
|---|---|---|
| 丸の内・大手町周辺 | 190〜250万円/㎡ | 630〜830万円/坪 |
| 千代田・日比谷周辺 | 160〜210万円/㎡ | 530〜700万円/坪 |
| 秋葉原・神田周辺 | 110〜150万円/㎡ | 365〜500万円/坪 |
| 区全体平均 | 約150万円/㎡ | 約500万円/坪 |
千代田区のマンション供給量は絶対的に少ない状況が続いています。新築分譲物件が出るたびに数ヶ月以内に完売するのが通例で、中古物件もリスティング後すぐに消化されます。
平均賃料相場
| タイプ | 月額賃料 | 主要エリア |
|---|---|---|
| 1R(ワンルーム) | 12〜18万円/月 | 秋葉原・神田周辺 |
| 1K / 1DK | 15〜25万円/月 | 区全般 |
| 1LDK | 25〜45万円/月 | 日比谷・番町周辺 |
| 2LDK | 45〜90万円/月 | 番町・市谷 |
| 3LDK以上 | 80万円〜/月 | 高級タワーマンション |
番町エリアは東京で最も歴史ある高級住宅地の一つで、外交官や経営者層の入居者が多い地域です。
平均世帯所得
千代田区の納税者平均年収は約950万円水準で、東京23区平均(約450〜500万円)のほぼ2倍です。居住人口ベースの統計であるため、昼間の就業者所得はこれをさらに上回ります。
人口
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 総人口 | 約67,000人(23区中最少) |
| 人口密度 | 約4,100人/km²(23区中最低水準) |
| 昼間流入人口 | 80万人以上 |
| 最近のトレンド | 再開発に伴う居住用マンション増加で人口は緩やかに増加中 |
外国人比率
千代田区の外国人居住者比率は**約4.5%**です。在外公館勤務者、多国籍企業駐在員、国際機関職員が中心を占めます。韓国人コミュニティは新大久保(新宿区)に比べると規模は小さく、企業駐在員中心の構成です。
おすすめの対象者
- 移住者:丸の内・大手町に職場があり、通勤時間を最小化したい専門職の方。予算に余裕があれば番町・日比谷エリアがおすすめです。
- 投資家:希少性とブランド価値が高く、長期保有の資産価値は群を抜いています。キャップレート(Cap Rate:年間純賃料収入を売買価格で割った利回り指標)は年2〜3%と低水準ですが、資産価値の防衛力は都心3区の中で最強です。
- 旅行者:皇居外苑、日比谷公園、秋葉原が徒歩圏内。観光・ビジネス兼用の滞在先として最適です。
代表スポット
- 皇居外苑 — 都心の大規模緑地。ジョギングコースとして有名。皇居参観は事前申込で可能。
- 丸の内仲通り — 800mのケヤキ並木。季節ごとに異なる屋外展示が楽しめます。
- 秋葉原電気街 — 世界的な電子機器・サブカルチャーの拠点。移住後の家電購入に真っ先に訪れるエリアです。
- KITTE — 旧東京中央郵便局のリノベーション商業施設。屋上庭園から東京駅の全景を無料で一望できます。
2. 中央区
ブランドポジショニング
中央区は「東京最古の心臓部」と言えます。江戸時代から商業の中心地だった日本橋、20年以上にわたって日本最高地価を維持する銀座、そして近年再開発の波が押し寄せる築地・豊洲エリア — 多様な顔を持つ区です。
中央区は千代田区より居住人口が多く(約19万人)、生活インフラも充実しています。高級住宅と商業機能が共存し、外国人駐在員にも人気の高い区です。
マンション平均売買相場
| エリア | ㎡単価(2025〜2026) | 坪単価換算 |
|---|---|---|
| 銀座・築地 | 150〜220万円/㎡ | 500〜730万円/坪 |
| 日本橋・京橋 | 120〜180万円/㎡ | 400〜600万円/坪 |
| 浜町・月島 | 90〜130万円/㎡ | 300〜430万円/坪 |
| 区全体平均 | 約130万円/㎡ | 約430万円/坪 |
日本橋周辺の再開発が続いており、新築タワーマンションの供給が増加しています。コレド室町などの複合開発が地域ブランドを押し上げており、マンション価格上昇の主要な原動力となっています。
関連記事:コレド日本橋・三井再開発分析
平均賃料相場
| タイプ | 月額賃料 |
|---|---|
| 1R | 10〜16万円/月 |
| 1K / 1DK | 13〜22万円/月 |
| 1LDK | 22〜38万円/月 |
| 2LDK | 35〜70万円/月 |
| 3LDK以上 | 60万円〜/月 |
銀座・築地エリアの高層タワー最上階ユニットは月100万円を超える物件も多数あります。
平均世帯所得
中央区の納税者平均年収は約730万円で、東京平均を大きく上回ります。銀座・日本橋の商業従事者と、金融・貿易業中心の駐在員の割合が高い構成です。
人口
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 総人口 | 約191,000人 |
| 人口密度 | 約17,000人/km² |
| 最近のトレンド | タワーマンション新築供給により、2000年以降人口が2倍以上に増加 — 東京で最も人口増加率の高い区の一つ |
外国人比率
中央区の外国人居住者比率は**約5.5%**で、都心3区の中では相対的に高い水準です。中国系・韓国系を含むアジア系外国人と、欧米系金融・貿易駐在員が混在しています。
おすすめの対象者
- 移住者:生活利便性と都心へのアクセスを両立したいシングル・カップルに最適。浜町・月島周辺は都心3区の中では比較的手頃な賃料帯です。
- 投資家:タワーマンションのキャップレートは都心3区の中では相対的に良好(年3〜4%)。日本橋再開発の恩恵エリアとして中長期保有が有力な選択肢です。
- 旅行者:銀座ショッピング、築地市場、浜離宮恩賜庭園 — 東京の主要観光スポットが徒歩圏内にあります。
代表スポット
- 銀座 — 日本最高地価の商業エリア。高級ブランドのフラッグシップ店が並び、土日は歩行者天国に。
- 築地場外市場 — 海鮮朝市。移住後の生活圏で最も近い食材マーケットです。
- 浜離宮恩賜庭園 — 江戸時代の将軍別邸跡。スカイラインを背景にした庭園が絶景(入場300円)。
- 日本橋 — 日本全国道路の起点。再開発のただ中にある歴史的遺産。
3. 港区
ブランドポジショニング
港区は都心3区の中で最も「国際的」な区です。六本木、麻布、赤坂、白金、芝浦 — その名前だけで、ソウルの梨泰院・江南・聖水洞を合わせたようなイメージが浮かぶ街が一つの区の中に共存しています。
港区には160以上の外国大使館・公館が立地しています。東京で外国人居住者比率が最も高い区でもあります。六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、麻布台ヒルズなど、東京を代表する複合ランドマークが集積しています。
私が初めて広尾商店街を歩いたとき、看板が英語・韓国語・中国語で併記されているのを見て確信しました。「これは外国人のための街だ」と。東京で言語の壁なく定着できる区を一つ挙げるなら、港区が断然最初の選択肢です。
マンション平均売買相場
| エリア | ㎡単価(2025〜2026) | 坪単価換算 |
|---|---|---|
| 麻布・広尾 | 180〜280万円/㎡ | 600〜930万円/坪 |
| 六本木・赤坂 | 150〜230万円/㎡ | 500〜760万円/坪 |
| 白金・白金台 | 140〜210万円/㎡ | 465〜700万円/坪 |
| 芝浦・田町 | 100〜150万円/㎡ | 330〜500万円/坪 |
| 区全体平均 | 約160万円/㎡ | 約530万円/坪 |
麻布台ヒルズ(2023年開業)の入居後、周辺の高級マンション相場はさらに上昇しています。外国人購入者は特に麻布・広尾エリアに集中しています。
関連記事:都心5区マンション坪単価比較
平均賃料相場
| タイプ | 月額賃料 |
|---|---|
| 1R | 13〜20万円/月 |
| 1K / 1DK | 16〜28万円/月 |
| 1LDK | 28〜55万円/月 |
| 2LDK | 50〜120万円/月 |
| 3LDK以上 | 100万円〜/月 |
麻布・広尾の3LDK以上の高級賃貸は外資系企業の社宅契約が多く、月200万円を超える物件も珍しくありません。
平均世帯所得
港区の納税者平均年収は約1,200万円以上で、東京23区の中で第1位です。高収入の金融専門職、外資系企業役員、外交官が多数居住しています。
人口
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 総人口 | 約266,000人 |
| 人口密度 | 約13,500人/km² |
| 最近のトレンド | 再開発ランドマークへの入居効果により、着実に人口増加中 |
外国人比率
港区の外国人居住者比率は**約11〜12%**で、23区中最高水準です。英語・中国語で生活できる環境が整っており、外国人専門の不動産仲介サービスも充実しています。韓国人コミュニティは赤坂・六本木を中心に形成されています。
おすすめの対象者
- 移住者:英語環境を必要とする外国人移住者に断然最適です。インターナショナルスクール、外国人対応クリニック、インターナショナルスーパーへのアクセスは区内随一です。
- 投資家:外国人借主の需要が豊富で空室リスクは最小限に抑えられます。キャップレートは年2.5〜3.5%ですが、資産希少性と外貨ヘッジ機能から長期保有が選好されています。
- 旅行者:六本木ヒルズ森美術館、国立新美術館、東京タワーがすべて徒歩圏内です。
代表スポット
- 六本木ヒルズ森美術館 — 東京現代美術のランドマーク。53階の東京シティビュー展望台と一体運営。
- 麻布台ヒルズ — 2023年開業。森JPタワーは高さ330mで東京最高層。
- 広尾商店街 — 移住する外国人が真っ先に訪れる多国籍スーパーの集積地。
- 東京タワー — 港区芝公園内。夜景観賞の定番スポット。
4. 比較サマリー
データだけ見ると港区が「最高」に見えます。しかし私の判断は少し違います。キャップレート(Cap Rate)より希少性を重視するなら千代田区、再開発のモメンタムを求めるなら中央区の方がむしろ優れた選択肢になり得ます。「高い=良い」という論理だけで港区を選ぶのは、戦略ではありません。
| 項目 | 千代田 | 中央 | 港 |
|---|---|---|---|
| 区面積 | 11.66km² | 10.21km² | 20.37km² |
| 人口 | 約67,000人 | 約191,000人 | 約266,000人 |
| 外国人比率 | 約4.5% | 約5.5% | 約11% |
| マンション平均㎡単価 | 150万円 | 130万円 | 160万円 |
| 納税者平均年収 | 約950万円 | 約730万円 | 約1,200万円以上 |
| キャップレート(参考) | 2〜3% | 3〜4% | 2.5〜3.5% |
| コアイメージ | 権威・行政・金融 | 商業・文化・再開発 | 国際・ラグジュアリー・大使館 |
| 外国人生活利便性 | ★★★☆ | ★★★★ | ★★★★★ |
5. 外国人購入時の注意事項
法的制限
日本は外国人の不動産取得に法的制限を設けていません。ただし、土地取得の場合は特定地域(防衛施設周辺等)において事前届出義務が生じます。都心3区内の一般的なマンション(区分所有)は該当しません。
ローン(モーゲージ)
- 非居住者:日本の銀行からの借入は事実上困難です。現金購入または本国資産を担保にした資金調達が現実的な手段です。
- 居住者(在留資格保有者):みずほ・UFJ・住友などの一部銀行が外国人向けローンを取り扱っています。必要書類は在留カード、源泉徴収票2年分、雇用契約書です。
管理費・修繕積立金
都心3区の高級タワーマンションでは、管理費と修繕積立金(長期修繕工事のために毎月義務的に積み立てる費用)の合計が月5〜15万円に達する場合があります。購入価格とは別に必ず確認が必要です。
言語・行政手続き
- 中央区役所・港区役所は外国語対応窓口を設置しています(英語・中国語)。
- 千代田区役所は英語対応可能ですが、一部の手続きは日本語のみの場合があります。
- 不動産契約の際は、認定バイリンガル通訳士または外国人専門仲介業者の利用を強くお勧めします。
次回予告
[Ep.2] 都心準核6区 — 東京の顔:新宿・渋谷・文京 — 来週公開予定。
商業の新宿、トレンドの渋谷、学問の文京。都心3区と肩を並べる第2のプレミアムレイヤーを徹底解剖します。
免責事項:本記事は情報提供・教育目的のみを目的として作成されており、投資勧誘、法律上の助言、税務相談を構成するものではありません。不動産相場は市場状況に応じて随時変動します。すべての財務的決定を行う前に、必ず資格を有する専門家にご相談ください。


