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東京どこに住むか — 23区完全ガイド [Ep.10] 多摩教育・文化ベルト:国分寺・国立・府中・立川

東京どこに住むか — 23区完全ガイド [Ep.10] 多摩教育・文化ベルト:国分寺・国立・府中・立川

※ 本記事は情報提供を目的とした個人的な分析であり、特定の不動産・投資商品の売買を推奨するものではありません。投資・税務・法務・入国管理等の判断は、公的資料の確認と有資格の専門家への相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。数値・制度・相場・運営情報は掲載時点のものです。確認なく意思決定に用いないでください。執筆後も市場・制度は変更される場合があります。

Ep.09では武蔵野・三鷹・調布を中心とした西部プレミアム生活圏を取り上げました。今回は中央線をもう少し西へたどり、国分寺・国立・府中・立川の4市を見ていきます。

この地域は「23区より安い郊外」とよく表現されます。取引データを一つひとつ確認していくと、4市を一つの市場としてまとめるのは難しいと感じました。同じ市でも町名によって異なる価格分布が広がっており、鉄道網・再開発・生活圏がその違いを生み出していました。


まず結論から


なぜこの記事を書くか

私自身、最初は多摩地域を一つの生活圏として考えていました。「23区より安い場所」「コスパの良い郊外」というイメージです。学園都市の国立、行政・競馬のある府中、地方都市のような印象の立川まで、一括りのコスパエリアとして語られることもあります。

町名単位の成約価を一つひとつ照合していくと、考えが変わりました。市の名前だけでは説明できない格差が繰り返し現れ、どの町名かどの路線を使うか再開発が進んでいるかが、価格差を説明するうえで大きく影響していました。

そのため今回は市の平均より一段階深く踏み込み、町名単位の価格構造を読むことに焦点を当てました。


最初の仮説とデータが変えたこと

最初は4市が似たような水準の郊外プレミアムを形成しているだろうと見ていました。データを見ていくなかで、印象が以下のように変わっていきました。

確認した内容データが示したこと
国分寺 本町 126.5万/㎡「多摩=安い」と正面から矛盾。駅直結・北口再開発の町名が市の平均を引き上げている
立川 曙町 vs 一番町 3.6倍同じ立川市でも、JRハブ・再開発軸 vs 西武線・低層住居軸に分かれている
SUUMO 1R ±18% vs 町名㎡単価 5倍以上売買価格マップと賃料マップは別のマップ
所得1位 国立 vs 町名最高値 国分寺本町所得だけで価格順位は並ばない

目次

  1. 4市、4つの市場
  2. 立川の中で分かれる2つの生活圏
  3. 売買価格と賃料は別の基準で動く
  4. 合わせて見ておきたい背景データ
  5. 4市比較まとめ
  6. 同じデータ、別の読み方
  7. こんな方に向いている・向いていない
  8. Joseph’s View

1. 4市、4つの市場

以下の表は「どの市が最も安いか」ではなく、**「市の中のどこがプレミアムか」**を見るためのデータです。

国分寺市 — 西部鉄道ハブ

国分寺駅は1日の乗降客が約30.6万人で、4市の中でハブ性が最も明確です。市全体の㎡単価は2021年58.7万円→2025年82.2万円(4年CAGR 8.8%)。70㎡換算約5,754万円(千代田区Ep.01基準の約42.2%)。

町名㎡単価(成約)70㎡換算件数
本町126.5万円約8,855万円37
東恋ケ窪70.6万円約4,942万円46
西町45.4万円約3,178万円16
市全体平均82.2万円約5,754万円156件

注目ポイント: 本町の126.5万は4市の中で町名最高水準です。国分寺駅北口再開発・JR中央線・西武線乗換と連動しています。件数は37件のため、「駅から何分」ではなく国土交通省の町名単位成約データを基準に解釈しました。

国立市 — 学園都市、町名による差異

一橋大学・東京学芸大学など学園・住宅都市です。国立駅は約9.4万人/日 — ハブ駅である国分寺・立川より利用者が少ない。㎡単価53.8万→64.2万(CAGR 4.5%)、70㎡約4,494万(千代田区約33.0%)。

町名㎡単価(成約)70㎡換算件数
73.4万円約5,138万円23
70.4万円約4,928万円22
富士見台58.0万円約4,060万円28
青柳44.3万円約3,101万円7
市全体平均64.2万円約4,494万円105件

予想と異なった点: 1人当たり所得は4市中**1位(191.9万)**ですが、最高価格の町名は国分寺本町より低い。「学園都市=一括プレミアム」という見方よりも、東・中 vs 青柳のように立地別で読む方が実情に近いです。駅利用者数と大規模再開発の触媒は相対的に弱い軸です。

府中市 — 行政・娯楽と生活圏

東京競馬場・府中駅周辺の行政・娯楽軸。分倍河原駅約15.7万人/日、市内に駅が14駅。㎡単価48.9万→60.3万(CAGR 5.4%)、70㎡約4,221万(千代田区約31.0%)。

町名㎡単価(成約)70㎡換算件数
宮西町89.6万円約6,272万円45
府中町75.3万円約5,271万円24
白糸台50.0万円約3,500万円35
四谷34.9万円約2,443万円18
市全体平均60.3万円約4,221万円370件

解釈が分かれる点: 宮西町白糸台の対比が鮮明です。成約件数(370件)は4市中最多で流動性が高い市場です。行政・娯楽文脈の町名プレミアムと周辺低価格エリアが一つの市の中に共存する構造として読めます。

立川市 — 市の平均では見えない差

行政・商業副都心イメージが強い市です。立川駅約30.1万人/日、市内駅合計約52.6万人/日。㎡単価42.1万→50.8万(CAGR 4.8%)、70㎡約3,556万4市中市平均最低(千代田区約26.1%)。

町名㎡単価(成約)70㎡換算件数
曙町83.4万円約5,838万円34
錦町57.4万円約4,018万円57
一番町23.0万円約1,610万円19
市全体平均50.8万円約3,556万円209件

データを見て印象が変わった点: 市の平均だけ見ると「多摩最低価格」に見えますが、曙町は㎡当たり80万台です。公開再開発資料(立川タクロス等)と曙町 vs 一番町の対比を合わせると、曙町は駅・再開発・インフラ軸、一番町は異なる生活圏の性格 — 西武線・低層住居軸 — として分かれる流れが見えてきます。一番町は19件 — 傾向参考のみ。


2. 立川の中で分かれる2つの生活圏

少し立ち止まってみます。立川の3.6倍の格差は、この分析で最も時間をかけた部分です。

「立川」一語でまとめると、上の表の格差が隠れてしまいます。曙町と一番町は価格だけでなく、生活圏の性格そのものが異なります

曙町(あけぼのちょう) — JR立川・多摩モノレール立川北乗換、立川タクロスなど北口再開発(2016年竣工)以降の駅前商業・新築マンション軸。公示地価・分譲資料で駅近プレミアムが繰り返し確認されます。

一番町(いちばんちょう)西武立川生活圏の性格が強く、第1種低層専用住居地域の割合が大きい。成約㎡単価が20万台というのは「立川が安いから」というより、異なる路線圏・低層住居の側からのシグナルとして読む方が自然です。

最初は再開発が曙町の売買価格を引き上げる主な要因だろうと考えていました。資料と取引データを合わせて確認すると、曙町83.4万 vs 一番町23.0万の格差はその予想と同じ方向でした — 北口再開発・駅ハブ軸が価格を押し上げていたのは曙町側でした。


3. 売買価格と賃料は別の基準で動く

価格が高い場所は家賃も高いはず、と思いがちです。実際のデータでは必ずしもそうではありませんでした。売買価格マップと賃料マップが独立して動いていた点が印象的でした。

以下の表は市の平均㎡単価とSUUMO新築1R(駅徒歩1〜5分)を並べたものです。

SUUMO 1R(万円/月)市平均㎡単価表面利回り*
国分寺市9.482.2万円~1.9%
国立市9.364.2万円~2.5%
府中市8.660.3万円~2.4%
立川市8.050.8万円~2.7%

*70㎡・市平均㎡単価・税前・管理費・空室未反映。構造比較用であり投資助言ではありません。

立地別に見ると: 立川一番町(23.0万/㎡)のように売買価格が低い町名は、同市の1R(8.0万)を仮定すると表面利回りが4〜6%台まで開く可能性があります(実際の一番町1Rはより低いかもしれません)。国分寺本町(126.5万)・立川曙町(83.4万)は売買プレミアムが大きく、利回りは**〜1.3〜1.6%**程度に圧縮されます。

同じベルト内でも売買価格と賃料は別の基準で動いていました。実需・投資いずれも立地・路線・再開発 → 賃料の順で見る方が、このデータでは有効でした。


4. 合わせて見ておきたい背景データ

人口と所得も参考になります。ただし今回の分析では価格差を説明する力は相対的に大きくありませんでした。以下の表は「どの市を買うべきか」の結論用ではなく、多摩が23区・市町村平均と異なる層にあるという文脈確認用です。

人口予測(2020→2040)

2020年2040年Δ
国分寺市167,916170,606+1.6%
国立市150,305151,219+0.6%
府中市321,303326,461+1.6%
立川市113,584112,097−1.3%

4市とも急激な増減よりも緩やかな推移です。立川のみ小幅減少の見通しです。

1人当たり所得(令和6年度・万円/人)

1人当たり所得参考:市町村計207.7・23区計287.4
国立市191.9
国分寺市179.7
府中市155.5
立川市146.7

4市は市町村平均(約208万)を下回り、23区(約287万)とも距離があります。市の名前だけで売買価格の順位は並びません。 価格差の説明に実際に影響したのは駅・路線・再開発が絡む立地側でした。


5. 4市比較まとめ

これまでの内容を表にまとめます。

項目国分寺市国立市府中市立川市
代表駅乗降数/日国分寺30.6万国立9.4万分倍河原15.7万立川30.1万
70㎡成約価(2025)5,754万円4,494万円4,221万円3,556万円
千代田区比42.2%33.0%31.0%26.1%
成約CAGR(2021–25)8.8%4.5%5.4%4.8%
人口Δ 2040+1.6%+0.6%+1.6%−1.3%
1人当たり所得179.7万191.9万155.5万146.7万
SUUMO 1R9.4万9.3万8.6万8.0万

興味深いのは、国分寺が最高の上昇率(8.8%)を示した一方で、国立が最高の所得(191.9万)を記録したことです。所得と売買価格は常に同じ方向に動くわけではありませんでした。

シリーズ内での位置づけ:

70㎡成約価4年CAGR
武蔵野市(Ep.09)6,636万円6.2%
国分寺市(Ep.10)5,754万円8.8%
三鷹市(Ep.09)5,803万円5.9%
国立市4,494万円4.5%
府中市4,221万円5.4%
調布市(Ep.09)4,536万円3.6%
立川市3,556万円4.8%

6. 同じデータ、別の読み方

もちろん、次のような読み方もあります。

「多摩は23区比で割安だから、市の平均で十分」

金利低下や市場全体が一方向に動く時期には、市の平均でも大きな流れは掴めます。ただし今回のデータでは、市の平均が本町・曙町・宮西町のような特定の町名プレミアムを隠し、立川内部の3.6倍格差を消していました。

「所得が高い国立こそ割安・上昇候補」

所得が高い市が価格も最も高いと思いがちです。2021〜25年のCAGRは国立(4.5%)が国分寺(8.8%)より低く、所得1位と価格1位の町名は一致しませんでした。所得だけで市を選ぶ読み方は、このサンプルでは弱い。


7. こんな方に向いている・向いていない

こんな方に役立つかもしれません

こんな場合には合わないかもしれません


8. Joseph’s View

データを検討しながら整理した判断です。現場体験談・架空の経験は含みません。

この記事を書いてみて

準備を通じて最も長く考え続けた問いは「多摩は本当に一つの市場なのか?」でした。取引データを比較しているうちに、「4市は似たような市場のはず」という漠然とした前提が揺らぎ始めました。国分寺本町126.5万立川の3.6倍格差は「安い郊外」という先入観と合いません。データと照らし合わせるなかで見方が少しずつ変わっていきました。結局、市の名前より人々が暮らす町名・生活圏の方が多くのことを説明してくれていました。

これからも保ちたい読み方

4市場を分けて見て、立川内部の二重構造を意識し、売買価格マップと賃料マップを別々に読みます。売買マップ ≠ 賃料マップ。

まだ確信しにくい部分

町名別の成約件数が30件未満の区間(青柳7件・一番町19件)は方向感の参考にとどめます。再開発・鉄道環境が変われば市場も変わります。

読者の方へ、確認をお勧めする順序

気になるエリアがあれば、次の順で確認することをお勧めします。

  1. 町名別の実際の成約価格(国土交通省)
  2. 鉄道と生活圏
  3. 再開発の公開資料
  4. ハザードマップ
  5. 実際の賃料(SUUMO等、表面利回りは構造比較用)

ひとことでまとめると

多摩教育・文化ベルトは一つの安い街ではなく4つの市場であり、同じベルト内でも立地・路線・再開発が分かれます。売買価格は大きく開いても駅近新築賃料は8〜10万台に収束するため、立地を先に選び、賃料・利回りはその次に見る順序が、このサンプルでは有効でした。


次回予告

次回は多摩ベルトを続けながら、学園・住宅都市軸をさらに広げていきます。(Ep.11〜 — パイロット進行中)


このシリーズ全体を見る


データ基準時点

項目基準
マンション㎡単価・成約国土交通省 不動産情報ライブラリ 2025年1〜4四半期
人口予測IPSS mesh 2020→2040
1人当たり所得令和6年度 市町村民税課税標準 ÷ 2026年5月 都人口推計
SUUMO 1R2026-06-26 スナップショット(新築・駅徒歩1〜5分)

※ 本記事は情報提供を目的とした個人的な分析であり、特定の不動産の売買を勧めるものではありません。表面利回りは管理費・空室・税金を反映しない単純比較です。町名別件数が30件未満の区間は傾向参考用としてのみ解釈してください。

出典・参考資料

  1. 1.国土交通省 不動産情報ライブラリ 成約価格情報(2025年1〜4四半期)公式
  2. 2.総務省 令和6年度 市町村税課税状況等の調 第11表公式
  3. 3.東京都の人口(推計)2026年5月公式
  4. 4.SUUMO 賃料相場(新築・駅徒歩1–5分・1R、2026-06-26スナップショット)公式

本文の緑色の数字脚注から下の項目へジャンプできます。URLは執筆時点で確認済み。「アーカイブ」は見出し統計のスナップショットです。


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著者について

GSF author

Joseph. KIMはGSFArkの創設者兼編集者です。 東京・日本橋を拠点に、日本不動産と長期投資について調査・執筆しています。

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