※ 本記事は情報提供を目的とした個人的な分析であり、特定の不動産・投資商品の売買を推奨するものではありません。投資・税務・法務・入国管理等の判断は、公的資料の確認と有資格の専門家への相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。数値・制度・相場・運営情報は掲載時点のものです。確認なく意思決定に用いないでください。執筆後も市場・制度は変更される場合があります。
東京の不動産を初めて検討する方が最初に聞く質問があります。「4,000万円台で住める場所はありますか?」
23区全体を見渡せば、答えは「あります」です。ただし、条件がつきます。都心から遠くなり、災害リスクは上がります。そのトレードオフを、データで率直にお見せします。
足立区・葛飾区・江戸川区 — 東京の北東部と東部に位置するこの3区は、23区の中で最も価格的なメリットが際立ちます。同時に、荒川と江戸川に挟まれた低地という地形特性上、水害・液状化リスクはいずれも「O」判定です。この事実を最初に申し上げます。
データの基準時点:マンション成約価格は国土交通省不動産情報ライブラリ2025年1〜4四半期基準。賃料相場はSUUMO新築+駅徒歩5分以内基準で随時変動します。最新数値は出典リンクでご確認ください。
目次
1. 足立区
足立区のイメージ問題は以前からよく語られます。古い工業地域、老朽化した住宅街、治安の懸念。2010年代初頭までは、その印象もある程度根拠がありました。
そのイメージを最も速く変えたのは、北千住駅の変化です。JR常磐線・東武伊勢崎線・東京メトロ千代田線・日比谷線・つくばエクスプレスの5路線が集中するこの駅は、1日の乗降客数が501,818人に達します。1 東京北東部でこの規模の交通ハブは他にありません。
皇居が位置するその結果、千代田区基準で成約価格の**30.5%**水準で取引されるこの区は、都心アクセスに対する価格メリットを論じる文脈では頻繁に登場する名前になりました。
算術検証:4,151万円 ÷ 1億3,629万円 × 100 = 30.5%
マンション平均売買価格
| サブエリア(町名) | ㎡単価(成約価格平均) | 70㎡換算 | 件数 |
|---|---|---|---|
| 綾瀬(町名) | 72.7万円/㎡ | 約5,089万円 | 55件 |
| 梅田(町名) | 62.7万円/㎡ | 約4,389万円 | 58件 |
| 新田(町名) | 60.1万円/㎡ | 約4,207万円 | 37件 |
| 東和(町名) | 51.9万円/㎡ | 約3,633万円 | 42件 |
| 西新井本町(町名) | 48.7万円/㎡ | 約3,409万円 | 33件 |
| 中央本町(町名) | 43.4万円/㎡ | 約3,038万円 | 42件 |
| 足立区全体平均 | 59.3万円/㎡ | 4,151万円 | 920件 |
※ n<30の町名は除外。MLIT成約価格・町名別集計基準。
北千住に隣接する綾瀬は区内で最も高い単価です。中央本町・西新井本町エリアは70㎡で3,000万円台での取引も可能な水準で、主要交通網へのアクセスを考慮すると注目に値します。
足立区の成約価格㎡単価は2021年の47.4万円から2025年の59.3万円へ、4年CAGR 5.8% 上昇しました。1
※ このシリーズのCAGRはすべて2021〜2025年成約価格データを基準に算出しています。
賃料相場
| 間取り | 相場(新築+駅徒歩5分) |
|---|---|
| 1R | 7.7万円 |
リスク
足立区は荒川と隅田川に挟まれた低地を含みます。水害・液状化リスクはタイルサンプル基準でいずれも「O」です。区の西部・北千住周辺は東部に比べて地盤が相対的に安定しているエリアもありますが、物件選定時には個別立地のハザードマップ確認が必須です。
2020→2040年の人口増減率予測は**2.5%**で、本エピソードの3区の中で最もポジティブな数値です。5
2. 葛飾区
葛飾区と聞けば、多くの方が亀有を思い浮かべます。長寿漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の舞台です。その親しみやすいイメージとは裏腹に、不動産投資の文脈で葛飾区が取り上げられることはほとんどありません。
ところが、数字を見るとまったく異なる話が浮かび上がります。
葛飾区の成約価格4年CAGRは 7.3% です。今回の3区で最も高く、23区シリーズ全体でも上位に入る数値です。1
千代田区比の成約価格は 32.8% です。
算術検証:4,473万円 ÷ 1億3,629万円 × 100 = 32.8%
マンション平均売買価格
| サブエリア(町名) | ㎡単価(成約価格平均) | 70㎡換算 | 件数 |
|---|---|---|---|
| 新宿(町名) | 88.4万円/㎡ | 約6,188万円 | 38件 |
| 亀有(町名) | 80.5万円/㎡ | 約5,635万円 | 37件 |
| 金町(町名) | 72.7万円/㎡ | 約5,089万円 | 55件 |
| 東新小岩(町名) | 64.7万円/㎡ | 約4,529万円 | 44件 |
| 青戸(町名) | 59.7万円/㎡ | 約4,179万円 | 56件 |
| 立石(町名) | 53.7万円/㎡ | 約3,759万円 | 32件 |
| 白鳥(町名) | 52.4万円/㎡ | 約3,668万円 | 32件 |
| 葛飾区全体平均 | 63.9万円/㎡ | 4,473万円 | 582件 |
※ n<30の町名は除外。MLIT成約価格・町名別集計基準。
新宿(町名)はJR総武線へのアクセスが価格に反映されているようで、区内で際立った単価を示しています。亀有・金町もいずれも価格上昇が顕著です。亀有はJR常磐線(各駅停車)、金町は京成金町線に接続します。
賃料相場
| 間取り | 相場(新築+駅徒歩5分) |
|---|---|
| 1R | 7.2万円 |
3区の中で最も低い1R賃料です。購入価格対比の表面利回りを検討する際の参考値になりますが、利回りは税前・表面利回りの推定値であり、管理費・空室は含みません。
リスク
葛飾区も水害・液状化リスクは共に「O」です。荒川と中川に隣接する低地が大部分を占めます。2020→2040年の人口増減率予測は**0.8%**で、小幅な増加にとどまります。5 取引件数は582件で、データとしての信頼性は十分ですが、足立区(920件)や江戸川区(710件)と比較するとやや少なめです。個別取引の価格変動が区平均統計に与える影響が相対的に大きくなる点に留意が必要です。
3. 江戸川区
江戸川区は東京23区の最東端に位置します。区の東側の境界がそのまま千葉県との境界であり、江戸川がその境界を形成します。東京でありながら千葉に接する立地 — この位置づけが長らく「外縁部」のイメージを固定してきました。
居住環境の観点から見ると、評価は変わります。区の面積に占める公園・河川緑地の割合が高く、子育て環境と生活利便性を重視する実需層が厚い区です。
千代田区比の成約価格は 34.8% で、今回の3区の中で最も高い水準です。
算術検証:4,739万円 ÷ 1億3,629万円 × 100 = 34.8%
マンション平均売買価格
| サブエリア(町名) | ㎡単価(成約価格平均) | 70㎡換算 | 件数 |
|---|---|---|---|
| 南小岩(町名) | 99.0万円/㎡ | 約6,930万円 | 33件 |
| 船堀(町名) | 85.3万円/㎡ | 約5,971万円 | 45件 |
| 平井(町名) | 79.9万円/㎡ | 約5,593万円 | 70件 |
| 西小岩(町名) | 79.2万円/㎡ | 約5,544万円 | 42件 |
| 西葛西(町名) | 73.0万円/㎡ | 約5,110万円 | 100件 |
| 東葛西(町名) | 64.0万円/㎡ | 約4,480万円 | 44件 |
| 中葛西(町名) | 57.0万円/㎡ | 約3,990万円 | 49件 |
| 南葛西(町名) | 57.1万円/㎡ | 約3,997万円 | 42件 |
| 江戸川区全体平均 | 67.7万円/㎡ | 4,739万円 | 710件 |
※ n<30の町名は除外。MLIT成約価格・町名別集計基準。
西葛西はn=100で区内最大サンプル地域です。東京メトロ東西線の主要駅であり、インド系コミュニティが形成されていることでも知られています。平井・船堀はJR総武線・都営新宿線沿線として単価が高めです。
江戸川区の成約価格CAGRは4年基準で 5.8% です。1
賃料相場
| 間取り | 相場(新築+駅徒歩5分) |
|---|---|
| 1R | 9.1万円 |
3区の中で最も高い1R賃料です。購入価格対比では相対的に利回りが圧縮された構造になります。
リスク
江戸川区は東京23区の中で低地比率が最も高い区のひとつとして挙げられます。水害・液状化リスクはいずれも「O」で、東京都のハザードマップでも区内の広い範囲が浸水想定区域に指定されています。区自体がハザードマップの周知に積極的に取り組んでいることも、その事実を反映しています。
2020→2040年の人口増減率予測は**1.1%**減少で、3区の中で唯一の減少予測です。5 長期的な需要を見通す上で留意すべき数値です。
4. 3区比較まとめ
| 区 | 70㎡成約価格 | 千代田区比 | ㎡単価 | 成約CAGR(4年) | Top駅 | 1R | 人口Δ(2040) | 水害リスク |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 足立区 | 4,151万円 | 30.5% | 59.3万円 | 5.8% | 北千住 | 7.7万円 | 2.5% | O |
| 葛飾区 | 4,473万円 | 32.8% | 63.9万円 | 7.3% | 新小岩 | 7.2万円 | 0.8% | O |
| 江戸川区 | 4,739万円 | 34.8% | 67.7万円 | 5.8% | 小岩 | 9.1万円 | -1.1% | O |
| 千代田区(基準) | 1億3,629万円 | 100% | 194.7万円 | — | — | — | — | — |
水害リスク:MLITタイルサンプル基準(タイルサンプル ≠ 行政区全体)。個別物件はハザードマップ確認必須。 千代田区数値:MLIT成約価格2025年基準、n=357件。
5. データから読むインサイト
インサイト1:葛飾区のCAGRが7.3%なのはなぜか
足立区・江戸川区の4年CAGRがいずれも5.8%の一方、葛飾区は7.3%です。データに追うと、二つの要因が見えてきます。
一つ目は、出発点の単価が低かったことです。 2021年の葛飾区の㎡単価は48.2万円で、3区の中で最も低い水準でした。足立区(47.4万円)とほぼ同じ水準だったのが、2025年には63.9万円まで上昇し、足立区(59.3万円)を逆転しました。低い基繎からのキャッチアップが加速した構造です。
二つ目は、亀有・金町の再評価が進行中です。 こち亀の興がある動町としてのみ知られていた亀有(80.5万円/㎡、n=37)、金町(72.7万円/㎡、n=55)の単価上昇が区平均を引き上げました。特に金町は京成金町線とJR常磐線のアクセス性が徐々に市場に反映されているように見えます。
インサイト2:足立区の構造的ポジション
足立区は千代田区比**30.5%**という、3区の中で最低水準の価格ポジションを維持しながら、1日501,818人が利用する北千住という交通ハブを保有しています。この組み合わせは構造的に異例です。
通常、交通ハブを抜く区は周辺区比のプレミアムが形成されます。足立区の場合、災害リスク(浸水・液状化ともO)と区のイメージがこのプレミアム形成を抑制する要因として作用しています。言い换えれば、この構造的割引が解消される条件 — 再開発、イメージ改善 — が生まれた場合、上昇余地が比較的大きくなる可能性があります。ただしこの判断は個別立地単位で行う必要があります。
インサイト3:江戸川区のパラドックス — 最も高く、人口は減少
3区の中で、千代田区対比の価格が**最も高い(34.8%)区が江戸川区です。同時に、2020→2040年の人口増減率が唯一1.1%**減少と予測される区でもあります。
このパラドックスの背景は実住居需要層の構成にあります。西葛西を中心とした厘い実需 — 特に外国人コミュニティや育児層 — が現在の価格を支えています。1R賣料相場が3区の中で最も高い 9.1万円であることも同じ文脈です。ただし、長期的な人口減少予測が現実化した場合、流動性リスクは他の2区より高くなる可能性があります。
6. 投資・居住ガイド
価格を最優先に考えるなら
3区いずれも皇居が位置する千代田区比30〜35%の価格帯です。23区全体で最低価格帯グループに属します。予算4,000万円台で23区内居住を目指す場合、この3区が現実的な選択肢です。
交通アクセスは区によって大きく異なる
- 足立区: 北千住(1日乗降客数501,818人)を中心に、JR・東京メトロ・東武など多方面へアクセス。都心まで直通ルート多数。
- 葛飾区: JR常磐線・総武線・京成線の結節点。1日乗降客数141,472人を記録する新小岩は、総武線快速で両国・新宿圏へアクセス可能です。
- 江戸川区: 区北部は小岩(1日乗降客数116,612人)を中心としたJR総武線、中南部は東西線(西葛西・葛西など)と都営新宿線(船堀)が主要動線。日本橋・大手町方面へ直通。
災害リスクは3区共通の課題
水害・液状化リスク「O」はタイルサンプル集計基準であり、区全体が均一なリスク度を持つという意味ではありません。しかし、この3区が荒川・江戸川に挟まれた低地に位置するという地形的事実は変わりません。
物件選びの際に基本として確認すべきこと:
- 東京都水害ハザードマップ — 浸水想定区域・浸水深
- 液状化予測地図
- 建物竣工年(1981年新耐震基準以降かどうか)
価格が低いことには理由があります。その理由を理解した上で選ぶことと、理解せずに選ぶことは異なります。
実住居 vs 投賄、区別に異なるアプローチが必要
- 実需(居住性)優先 → 足立区: 交通ハブを直接利用可能、人口成長予測2.5%、価格の絶対値は3区で最安
- 価格上昇率顸視 → 葛飾区:7.3% CAGR、低い基繎からのキャッチアップ局面、ただし取引流動性は低め
- 生活環境優先 → 江戸川区:最高賣料相場(9.1万円)、緑地・公園豊富、ただし長期的な人口減少リスクを要注目
この記事の数値は、国土交通省不動産情報ライブラリ成約価格情報(2025年1〜4四半期)、SUUMO賃料相場(新築+駅徒歩5分以内)、東京都人口推計に基づいています。投資判断には個別物件の現地確認と専門家への相談を必ず行ってください。
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