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東京マンション価格はなぜまだ下がらないのか — 2026年4月REINS需給データを読み解く

東京マンション価格はなぜまだ下がらないのか — 2026年4月REINS需給データを読み解く

※ 本記事は情報提供を目的とした個人的な分析であり、特定の不動産・投資商品の売買を推奨するものではありません。投資・税務・法務・入国管理等の判断は、公的資料の確認と有資格の専門家への相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。数値・制度・相場・運営情報は掲載時点のものです。確認なく意思決定に用いないでください。執筆後も市場・制度は変更される場合があります。

東京不動産市場が奇妙な季節を迎えています。取引は減っています。売れ残った物件が積み上がっています。それなのに価格は上がります。正確に言えば — 価格が下がっていません。

2026年4月のREINS(東日本不動産流通機構)データは、この矛盾を数字で示しています。1 東京都の中古マンション成約件数は前年同月比 -6.7% 減少し、2,008件にとどまりました。同期間の在庫件数は +8.9% 増加し、25,139件が市場に積み上がりました。需要が後退し、供給が膨らむ — 価格下落の典型的な条件が揃っています。しかし成約㎡単価は +8.9% 上昇し、122.68万円を記録しました。

需要 -6.7%、在庫 +8.9%、価格 +8.9%。この三つの数字が同時に成立しているという事実が、現在の東京マンション市場の核心的な謎です。

なぜ価格が持ちこたえているのか

端的に言えば、売ろうとする人が売り出し価格を下げていないからです。日本の不動産市場の構造的特性として、売主は一度設定した希望価格をなかなか下げません。損失回避心理が強く、長期保有による税制メリットがあるため「今急いで売る理由がない」という判断が働きます。その結果、取引が途絶えながらも価格は維持される — いわゆる**「取引消滅+希望価格硬直」**局面が形成されます。

この現象が最も鮮明に現れているのが都心3区です。千代田・中央・港区の2026年4月在庫件数は前年同月比 +43.0% 急増しました。1 外国人投資需要が集中していた最高プレミアムエリアでこの速度で物件が積み上がっているということは、それだけ「買いたい」という需要が消えたことを意味します。それでも売り出し価格はなかなか下がりません。市場全体の平均単価がプラスを維持している背景がここにあります。

郊外に広がる熱気 — 東京発価格上昇の第二波

首都圏全体の平均成約件数減少幅(-1.2%)が東京都(-6.7%)より大幅に小さいという事実は興味深いところです。その差を埋めているのが首都圏郊外です。埼玉県 +6.2%、千葉県 +6.6%、神奈川県 +4.4%。在庫も郊外では一斉に減少しています(-4〜5%)。1

この流れを単純に「脱東京」と読むと文脈を見誤ります。東京が過去数年間にわたって急騰を続けてきた結果、都心への参入障壁が高くなった需要が、相対的に手頃な郊外へと移動している温気の波及(スピルオーバー)現象と言えます。ソウルで江南の価格が上昇したとき麻浦・龍山・城東が注目され、首都圏外縁部がその次を受けて上昇したパターンと構造的に類似しています。東京都心の価格上昇が郊外への需要を押し出しており、その需要が今、埼玉・千葉・神奈川で実際の取引として現れています。首都圏平均が下支えされているのは、郊外の活況が東京の低迷を相殺する構造です。

硬直性が崩れる条件

この価格硬直性は永遠に維持されるわけではありません。いくつかの条件が重なれば解消局面へと転換します。

第一に金利です。現在の日銀政策金利は0.75%で3回連続据え置き中ですが、2 政策委員9名のうち3名はすでに1.0%への引き上げを強く主張しました。次回の日銀会合は6月16日です。6月の据え置きが有力とされても、その後1〜2回の追加利上げの可能性は現実的です。エネルギー補助金効果を除くと、コアコアCPIは1.9%であり、食料品は4.1%上昇しています。3 政策の錯視の背後でインフレ圧力は生きています。ただし日本経済の体力が連続利上げに耐えられるかは疑問であり、中東情勢が安定して原油の需給が正常化すれば物価懸念も一緒に収まる可能性が高いと考えられます。結局、利上げサイクルは限定的な範囲で終わる公算が大きいと言えます。

第二に新築市場の冷え込みです。不動産経済研究所が好調の目安とする新築マンション初月契約率70%に対し、2026年4月の首都圏新築は62.3%にとどまりました。新築が売れなければ、ディベロッパーの価格調整圧力が中古市場にも波及します。

第三に在庫の滞留限界です。都心3区の在庫 +43%は異例の数値です。売れない物件が積み上がるほど、金利負担と管理費の支出が累積する保有者から順次、希望価格を引き下げ始めます。在庫増加ペースが維持されれば、この圧力は今年後半中に実際の取引価格に反映される可能性があります。

ソウルと比較すると — 東京の相対的な価格メリット

この時点で一歩引いて眺めると、別の絵が見えます。同等の経済力を持つ二つの都市、ソウルと東京を並べると、東京不動産の価格的ポジションは依然として魅力的です。

ソウル江南区のマンション坪単価は2025年基準で約1億570万원に達します。ソウル全体平均も5,400万원水準です。一方、東京都心の中古マンション成約㎡単価122.68万円は坪(3.3㎡)換算で約405万円、現在の為替レート基準で約3,850万원/坪に相当します。1 東京都心がソウル全体平均を下回り、江南と比較すれば3分の1水準です。

もちろん1対1の比較には限界があります。賃貸利回りの構造、保有税体系、管理費負担、外国人取得手続きが異なります。それでも同規模の経済を持つ両国の首都を並べてこの価格格差が維持されているということは、東京不動産がグローバルな視点でいまだ割安圏にあるという根拠となります。実際に外国人資本とJ-REIT需要が東京都心を執拗に狙い続けている理由がここにあります。

在庫が積み上がり取引が減少している現在の局面は不確実ですが、東京不動産の構造的割安論が消えるわけではありません。短期的な硬直性解消局面をどう読むかが、参入タイミングの核心です。

今この市場をどう読むか

実務的にまとめると三点になります。

購入を検討する立場であれば、今は希望価格と実際の取引価格の乖離が広がる局面です。同じマンションの中でも急売り物件と希望価格堅持物件が共存しています。成約㎡単価の平均が上昇しているという数字に騙されず、個別物件の実際の成約価格を追跡することが先決です。

保有者であれば、在庫増加ペースに注目する必要があります。都心3区 +43%は異例の数値です。物件の滞留期間が長くなるほど、最終的には希望価格の調整が伴います。短期的な流動性が必要であれば、今がむしろ売り時かもしれません。

様子見中であれば、6月16日の日銀決定と翌月のREINS2026年6月号を合わせて見ることを勧めます。3カ月連続の成約件数減少+在庫加速+利上げが重なれば、価格硬直性に亀裂が入る可能性が高いと考えられます。

反対仮説 — 「価格はさらに上がるかもしれない」

もちろん、この分析が外れるシナリオも存在します。円安が続くか追加的な円安に転じれば、外国人投資需要が再び都心の高額物件に集中しうます。また日銀が予想より早く利上げサイクルを終え、緩和的スタンスに復帰すれば短期的な金利負担は消えます。在庫が積み上がっても、プレミアム立地の希少性という物語が生きている限り、都心の超高額物件は別の論理で動くという点も看過できません。

ただしこのシナリオが成立するためには — 円安再開、日銀利上げ早期終了、外国人需要の再点火 — 三つの条件が同時に満たされなければなりません。現時点では、その可能性よりも、条件が一つでも欠ければ硬直性が崩れるシナリオ側の現実的な重みの方が大きいと判断されます。

現時点での合理的な視点

東京マンション価格はまだ下がっていません。しかしその理由は市場が強いからではなく、売りたい人が踏ん張っているからです。需要はすでに後退しており、在庫は積み上がっており、金利は限定的ながらも上昇方向を向いています。希望価格の硬直性はいつでも崩れうる状態に近づきつつあります。

ただし東京がソウル対比でいまだ割安圏にあるという事実は変わりません。現在の需給不均衡は短期リスクであり、ソウルとの価格格差は中長期的な構造的メリットです。その二つを同時に読むことが、今の東京不動産を見る合理的な視点です。

出典・参考資料

  1. 1.東日本不動産流通機構 REINS 月例マーケットウォッチ 2026年4月、公表 2026-05-13公式ポータル
  2. 2.BOJ Statement on Monetary Policy, 2026-04-28公式ポータル
  3. 3.総務省 消費者物価指数 報道発表 2026年4月分公式ポータル

本文の緑色の数字脚注から下の項目へジャンプできます。URLは執筆時点で確認済み。「アーカイブ」は見出し統計のスナップショットです。


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著者について

GSF author

Joseph (GSF) · 東京・日本橋の分譲マンションに自己居住・所有。韓国に投資用物件を保有。日本不動産・J-REIT・日韓クロスボーダー投資を実体験をもとに発信しています。

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