※ 本記事は情報提供を目的とした個人的な分析であり、特定の不動産・投資商品の売買を推奨するものではありません。投資・税務・法務・入国管理等の判断は、公的資料の確認と有資格の専門家への相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。数値・制度・相場・運営情報は掲載時点のものです。確認なく意思決定に用いないでください。執筆後も市場・制度は変更される場合があります。
多くの投資家は日本不動産を購入する際、取得税や保有中の税金は丁寧に確認しますが、売却時の税務については後回しになることが少なくありません。
しかし、韓国居住者が日本不動産を売却する場合、日本と韓国の税法が同時に適用される可能性があります。そのため、売買契約直前になって準備を始めるのでは遅い場合があります。
本記事では、韓国居住者が日本不動産を売却する際に確認しておきたい主要な税務手続きと実務上のチェックポイントを整理します。
一目で分かる流れ
韓国居住者
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日本不動産売却
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① 源泉徴収の対象か確認
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② 日本で確定申告
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③ 韓国で譲渡所得申告
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④ 外国税額控除を適用
1. 日本の個人譲渡所得税:短期・長期の保有期間判定の基準
日本の税法上、個人の不動産譲渡所得は、他の所得と合算せず個別に課税する「分離課税」が適用されます。この時、税額を決定する最大の要因が「保有期間」です。
保有期間が5年以下かそれを超えるかによって、適用される税率は倍近く異なります。しかし、単に物件の取得日から売却日までの日数をカレンダー上で計算するだけでは、税務上で大きな不利益を被ることがあります。
「譲渡した年の1月1日」を基準とするルール
国税庁(NTA)の規定によると、保有期間の判定基準日は実際の売却日ではなく、**「不動産を売却した年の1月1日」**となります。 1
分かりやすく言えば、**「売却した年の1月1日時点で保有期間を計算するルール」**と考えると理解しやすいでしょう。
例えば、2021年5月1日に取得した不動産を2026年6月1日に売却した場合でも、2026年1月1日時点では1月1日が4回(2022年、2023年、2024年、2025年)しか経過していないため、税法上の保有期間は4年8か月と判定されます。したがって、この取引は短期譲渡所得に該当します。
GSF Note
税率そのものよりも、保有期間の計算ミスの方が実務上よく見られます。
日本では、取得日から単純に5年が経過した時点ではなく、売却した年の1月1日を基準として長期保有かどうかが判定されます。
契約日が数週間変わるだけでも適用税率が変わる場合があります。売却時期は税務計画と合わせて検討することが重要です。
非居住者に適用される税率
日本に住民登録がない韓国居住者(非居住者)は住民税が課されず、以下の国税(所得税・復興特別所得税)のみが適用されます。
数日の違いでも税負担が大きく変わる場合があるため、売却時期も税務計画の一部として検討することが重要です。
2. 売却代金の源泉徴収と納税管理人を介した還付手続き

日本の税法では、非居住者への課税漏れを防ぐため、決済時に源泉徴収を行う制度が設けられています。
土地等の譲渡対価に対する10.21%の源泉徴収義務
原則として、買主は非居住者の売主へ代金を支払う際、譲渡益(利益)からではなく売却総額の10.21%を源泉徴収し、税務署に納付する義務があります。 4 対象は土地等の譲渡対価となります。敷地利用権のついた区分マンションもこの範囲に含まれます。売却代金の相当額が一時的に拘束されるため、決済時の手元資金のフローを考慮することをお勧めします。
源泉徴収が免除される3つの要件
ただし、買主および物件の用途が以下の3つの要件を同時に満たす場合、買主の源泉徴収義務は免除されます。 4
- 買主が法人ではなく個人であること
- 買主本人またはその親族が**自己の居住(実居住)**の用に供すること
- 売却代金が100,000,000円以下であること
法人の買主に売却する場合や、投資目的の個人に売却する場合は、代金の決済時に徴収された10.21%は、最終的な決定税額ではありません。非居住者の売主は、売却の翌年2月16日から3月15日までの間に、日本の税務署へ確定申告を提出することになります。 5
実際の取得費や譲渡経費などを差し引いて精算した譲渡税額が、すでに徴収された10.21%の額より少ない場合、その差額が還付されます。非居住者は日本国内に住所を持たないため、この申告手続きおよび還付金の受領を代理する納税管理人をあらかじめ選任し、税務署に届け出ておく必要があります。 6
3. 法人名義で売却した場合の課税の特徴
法人名義の売却では、個人に見られる保有期間による税率の区別はありません。売却益は法人の当該事業年度における他のすべての営業損益と合算され、一律の法人税率で課税されます。短期売買が多い場合やポートフォリオをさらに拡大する計画がある場合、名義の選択が手残りに与える影響が大きくなります。詳細な個人と法人の比較は、日本不動産法人名義 vs 個人運営の手取り精算比較ガイドをご参照ください。
4. 韓国国税庁への申告と外国税額控除による二重課税排除の原則
韓国の税法上、居住者が海外(日本)の不動産を譲渡した場合、韓国の国税庁(NTS)に対しても譲渡所得税を申告し、納税する義務が生じます。 7
韓国での申告スケジュール
- 予定申告: 不動産の譲渡日が属する月の末日から2ヶ月以内に, 税務署に予定申告と納税を行う必要があります。 7 通常、予定申告を適正に完了した1件の譲渡のみである場合は、翌年5月の確定申告義務が免除されます。 7
- 税率適用: 韓国国内の不動産譲渡所得と同様に、通常の基本累進税率がそのまま海外資産の売却益にも適用されます。
二重課税の排除:外国税額控除の適用
日韓両国で同一の売却益に対して二重に課税されるのを防ぐため、韓国の税法には外国税額控除制度が設けられています。 8 日本の税務署に納付した最終的な譲渡税額を、韓国で申告する譲渡税額から差し引くことができます。
[!WARNING] 外国税額控除の限界 日本での納税額は、韓国税法で定められた控除限度額(韓国での算出税額のうち、国外所得が占める割合)の範囲内でのみ差し引かれます。そのため、日本での税額が韓国の限度額を超える場合や、経費算入項目の違いによって一部の税額が相殺されずに残り、二重課税が完全には解消されない場合があります。売却前にクロスボーダーのシミュレーションをご相談することをお勧めいたします。
GSF Note
日韓両国に申告義務が生じる場合、実際の税額よりも申告の順序が重要になるケースがあります。
日本の申告が完了していることが、韓国での外国税額控除の適用をスムーズに進める前提となります。申告スケジュールも含めて計画しておくことが安全です。
さらに、売却に伴う税務処理は、将来の相続や贈与による資産移転とも深く関連しています。承継計画の基本については、日韓クロスボーダー相続・贈与税の実務基礎ガイドも併せてご確認ください。
5. 売却実務チェックリスト
契約締結から韓国での申告完了までの段階別確認項目です。
契約前
- 保有期間の確認: 売却年の1月1日基準で5年超かどうかを再確認 — 短期税率の適用を防ぐ
- 源泉徴収対象か確認: 買主が法人または投資目的の個人であれば10.21%の源泉徴収が適用
- 予想譲渡益の試算: 取得費・資本的支出・仲介手数料を反映した手残りの概算。賃回りと譲渡の損益分岐点分析ガイド参照
- 必要書類の準備: 取得契約書・資本的支出の領収書・納税管理人候補の確認
決済日
- 源泉徴収の最終確認: 決済前に買主の資格を再確認
- 実際の入金額を確認: 10.21%控除後の入金額と予想額を照合
- 領収書・契約書の保管: 決済関連書類全体のデジタル保管
日本での確定申告(売却翌年2〜3月)
- 納税管理人の選任・届出: 非居住者の代理申告者を事前に選任し、届け出る
- 必要経費の整理: 取得費・資本的支出・仲介手数料の証憑を一括提出
- 譲渡所得の計算・申告: 確定申告書提出、源泉徴収過払い分の還付確定
- 還付の確認: 還付金の振込口座を確保し、精算を確認
韓国での申告(譲渡日の翌月末から2か月以内)
- 海外譲渡所得の予定申告・納付: 管轄税務署へ提出
- 外国税額控除の適用: 日本の最終納税証明書を添付し、二重課税排除を申請
- 関連書類の永久保管: 日韓両国の契約書・納税証明・送金領収書をひとつのアーカイブにまとめて保管
6. 投資チェックポイント
まず売却時期を検討することが重要です
5年の境界線に近い物件であれば、契約日を数週間調整するだけで適用税率が大きく変わることがあります。単純な日数計算ではなく、売却年の1月1日基準でシミュレーションを行うことが安全です。
決済日の実際のキャッシュフローを先に確認することが重要です
源泉徴収が適用される取引の場合、実際の入金額は想定より大幅に少なくなる可能性があります。還付は翌年の確定申告後に行われるため、短期的な流動性についても合わせて計画することが重要です。
契約前に両国の税務を一緒に確認することが安全です
同じ取引でも、取得費、必要経費、保有形態、外国税額控除の適用方法によって実際の税負担は異なります。日韓クロスボーダー税務を扱う専門家と事前に個別状況を確認することが、実務的に推奨されるアプローチです。
GSF-Arkでは、日本不動産投資を単なる利回りや売却益だけで判断するものではなく、取得・保有・売却・相続までを含めた長期的な資産管理のプロセスとして捉えています。
本記事は、韓国居住者が日本不動産を売却する際に確認しておきたい制度と手続きをまとめた資料です。
実際の税額は、取得費、必要経費、資本的支出、保有形態、韓国税法の適用方法などによって異なります。
契約を進める前に、日韓クロスボーダー税務に精通した専門家とともに個別状況を確認することをお勧めします。
データ基準時点
- 本ガイドの解説は、2026年7月4日時点の適用法および国税庁等の公式資料に基づいています。税制は改正される可能性があります。実際の取引にあたっては、最新の制度を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。


